一人暮らしは楽しいけれど、想定外の事が起こりがちということ

前回に引き続き、私が一人暮らしで経験した、味わい深かったことを書くよ。

《天から落ちてきた》

ある日のこと、部屋のチャイムが鳴った。

ドアチェーンをかけ、そっと扉を開けると、そこには学生風の男の子が。 

話を聞くと、どうやら私の部屋の真上の部屋の住人で、洗濯物を中庭に落としたとの事。

アパートの構造上、一階の部屋からしか中庭にアプローチ出来ないので、我が部屋を訪ねてきたらしい。ならば仕方が無かろう、と私は中庭から件の洗濯物を拾い、彼に渡してやった。

数日後、彼はまたやらかしたらしい。今度はその瞬間を私は目撃していた。

案の定彼は我が部屋にやってきた。

ピーンポーン。

私は居留守を使い、彼の呼び出しを無視した。もう面倒だった。

彼は暫く粘ったが、私が出てこないので諦めた。

と思ったら、隣の住人に頼みに行った。

隣人は、我が部屋の前まで彼の落とし物を拾いにきた。

私は気まずさのあまり、布団をかぶって病気のふりをした。

教訓 

集合住宅を決めるときは、物件の構造も吟味する事

《今日は眠れない》

もうひとつ、物干しネタ。

私は布団を干すのがすきだ。

東京の住宅街にある民家が密集したアパートの物干場に日差しの恩恵は殆ど無いが、私は暇さえ有ればせっせと布団を干していた。

ある夏のこと、とても天気のいい朝だったので、布団を干した、そして、そのまま遊びにでかけた。

ところがだ、夏というのは恐ろしい。なんと、私が不在の間、ゲリラ豪雨が我が町を襲い、私の大切な布団を濡らしていった。それも隙間なく満遍なく…

帰宅した私は、布団の惨状を見て途方に暮れた。「今日、眠れない」

ワンルームに余分な荷物は無い。もちろんかさばる予備布団などあるはずもない。

私は、救いを求めて外に出た。布団を買いに。残念ながら我が町商店街には布団屋はなかった。

しかし、結局のところ私はその晩眠れた。 

床に寝た?イヤイヤ。よそに泊まった?ノー。

我が商店街には、強い味方がいた。電気屋だ。私は布団乾燥機を買ったのだ。

ブラボー電気屋

教訓

困ったときは電気屋を覗く

《急病》

引っ越して間もない頃の話。

朝、突然の腹痛に襲われた。

それまで経験したことのない痛みだった。

脂汗が滴り、貧血状態で身体を起こすことも出来ない。うずくまって痛みが収まるのを待ったが、収まるどころかいや増すばかりだった。

救急車を呼ぼうかと考えたが、近所の注目を浴びるのが恥ずかしくて躊躇した。この世の終わりとも思える苦しみの中、こんな冷静な事を考える自分が心底嫌いになった。

ほんの少し痛みが落ち着いたころ、区役所で貰った「困った時のQ&A」的な冊子を開き病院を探した。しかし、土地勘の無い私にはどこに何があるやらチンプンカンプンだった。

ようやく起き上がれる位になった頃、私は救いを求めて外に出た。当てはなかった。

駅前に出ると交番があった。私は転がり込んだ。「いい病院教えてください」

教訓

警察に行っても解決する事は少ない

後日談

といってもその日の事だが、結局自分で病院探して行った。午後から仕事にも行った。私はひとりで生きてゆく自信がついた。

《貼り紙》

「○△さ~ん、○△さ~ん」

窓の外から誰かを呼ぶ声がする。

○△は私の名前ではない。ので無視した。

その後約30分ほどしつこく声がしたが、自分には関係ないと思い、そのまま放置。

声も止み、なんだったんだ、と思いつつもその日は過ぎた。とおもった。

しかし、地獄の蓋が開くのは数日後、時間差で攻撃してきた。

ある休日、私は買い物に出かけた。

帰宅したのは午後6時頃、部屋の前に立つと、貼り紙がしてある。読んでみると

「○△様。あなたは家賃を滞納しています。先日訪ねましたが留守でした。従い部屋の鍵を付け替えました。連絡は以下に願います」

にゃにい、滞納? 鍵付け替え?

私の持つ鍵を鍵穴に突っ込んだが確かに回らない。間違いなく付け替えられた。

慌てて連絡先に電話をした。滞納した記憶は無いが振り込み先を間違えた可能性もあるため、下手に出つつ閉め出された旨を伝えると、

「あなたは滞納してません。部屋を間違えました。」はあ?

再度貼り紙を読み直すと○△様となっている。確かに私の名前じゃない。

すぐ担当者が来るというので、近所のコンビニで時間つぶしをしながら待つことにした。待ってる内に当然だが腹がたってきた。間違いとはいえ、私の部屋のドアに私が滞納している旨をさらした貼り紙が張られていたのだ。他の住人が読んだ可能性はあるぞ。恥ずかしいじゃないか。その上万一帰宅が深夜だったら、担当者と連絡が取れなかったかもしれないのだ。間違いでしたで済む話じゃないだろう。

30分後、ようやく担当者が来た。平謝りで、新しい鍵をくれた。菓子折りくらい持参するかと思ったが手ぶらだった。積もっていた私は何かひとこと言ってやろうと思ったが、出てきた言葉は

「合い鍵もください…」

嗚呼小心者。

教訓

きちんと抗議できる根性をつけよう

《海》

我が部屋の前の中庭をショートカットしてゴミ捨てに行く輩がいることは前に書いた。

ある日中庭から道路へ出る扉のところに一包みのゴミ袋が置かれていた。

どうやら横着者の一階住人がショートカットルートでゴミを捨てに行こうとしたらしいが、扉に鍵がかかっていたため道路に出られなかったらしい。そしてその横着者はゴミを自宅に持ち帰らず放置したようだ。

ゴミ捨て場の位置関係が分からないとこの話も分からないと思われるので、改めて説明すると、アパートの北に面し道路があり、アパートの総合玄関も北面している、そしてゴミ捨て場は敷地の北東にある。つまり本当なら住人は北の総合玄関を出て、道路を東進し、ゴミを捨てに行く必要がある。

実際、一階東側の棟の住人にとっては中庭をつたって中庭扉から出入りするほうが近道ではあった。だが、その扉はいつもは鍵がかけられていて、開いていたのは管理者のうっかりミス。本来その扉は住人は利用してはいけないものだった。

またその中庭も管理者がアパートのメンテをするためのものであって、住人が気楽に歩いていいものではなかった。

横着者は二重の違反を犯していた。

さて、私は横着者の良心を信じ待った。しかし件のゴミ袋は1日たっても2日たっても撤去されなかった。

3日目、地獄の蓋がとうとう開いた。

朝、窓を開けると、そこはゴミの海だった。食品の包み、チラシ、ティッシュなどの紙ゴミの他、使用済みのコ××××。ストッキング、生××品、などなど他人に見られたらとても恥ずかしいものが庭一面に晒されている。

猫かカラスか分からないが、どうやら袋を破って散らかしたようだ。

凄惨な現場に私は吐き気をもよおした。

気持ちが悪くて、洗濯物を干すのはおろか、窓を開けることすら躊躇した。

しかし私はバカ正直に待った。犯人が片付けにくるのを。

数日待ったが変化なし。

私は管理会社に電話した。

後日、管理会社の社員(若い男性)が説明にやってきた。真犯人は私の部屋の2つ隣りの住人の女性だということを教えてくれた。ゴミの中の封筒の宛名でばれたらしい。片付けも注意もその社員が行ったそうだ。犯人の女は相当な赤っ恥をかいたことだろう。

しばらくしてその住人は引っ越した。

教訓

ゴミ問題は後々禍根を残す

《本当だったよ》

北側の道路でガス管工事が始まった。

とてもやかましかったが、一週間も立たない内に終わり、ホッとしていた。

しかし、地獄の蓋は間もなく開く。

ガサガサ、ゴソゴソ、天井から聞こえる異様な音で私は夜中目を覚ました。しばらくすると聞こえなくなったので、再び眠りについた。

翌夜中、またあの音が聞こえる。ガサガサ、ゴソゴソ、チュウチュウ? まさか…

聞こえなかったふりをして目を閉じた。

そのまた翌日の夜中、今度はシンク下のストッカーからあの音が聞こえてきた。

翌朝、ストッカーの中を調べると、封の切ってあったそうめんがかじられていた。間違い無い。奴だ。

ペストになるといけないので、かじられた食品は全て処分し、ストッカーの中を丁寧に掃除した。排水管と排水溝の隙間はガムテープで塞いだ。

その夜も宴は始まった。

翌朝、ストッカーを開けると、やられていた。ガムテープはかじり破られ、まだ開封していないパスタなどが包みごと食い散らかされていた。

このままでは全て食い荒らされてしまうと思い、ストッカーの中の食品は処分し、タッパーに入っていて無事なものは別の場所に疎開させた。排水管、排水溝、その他隙間は全部アルミ箔を丸めて埋めた。 その晩も奴らのサバトは続いた。

恒例になった朝のストッカー確認。食品が無かったので、ヤケクソか、アルミ箔が少しかじられていた。しっぺ返しに糞の置き土産もあった。

我が対処に対抗するように、奴らは昼間も暴れるようになった。

もはや全面戦争の様相を呈してきた。

天井、床下、シンクの隙間、あらゆるところから四六時中チュウチュウが聞こえる。

幻聴すら聞こえるようになった。

私はノイローゼになった。

私は負けた。

私は管理会社に電話した。

すぐにネズミ退治の会社の人が来て、手当てしてくれた。もっと早く言って下さいと注意もされた。その晩からチュウチュウは聞こえなくなった。

その後、回復した私は友人にふれまわった。

「ネズミがチュウチュウって鳴くって本当だったよ」

教訓

手に負えない事はプロに任せる

追記

ガス管工事などをするとネズミの通り道が変わり、今まで出現しなかった奴らが突然出没するようになることがあるらしい

《通知》

郵便受けを覗くと、ある一枚の通知がはいっていた。

内容は家賃の振り込み先の変更。

このアパートは一度管理会社が変わったこともあったし、また変更かと軽く考えた。

しかし疑問もあった。管理会社からのお知らせはいつも郵送で届くのに、なぜ今回はペラが一枚??

そこで、通知を読み返してみると、さらにおかしな点が。振り込み先の支店が多治見支店と書いてある。私は多治見がどこにあるか知っていた。岐阜県だ。東京のアパートで東京の管理会社なのになぜ岐阜県の支店に振り込まにゃならんのだ。怪しい。

私は管理会社に電話した。

「あー、それ詐欺です。無視して下さい」

教訓

疑問に思ったらまず確認

《向かいの奥さん》

ドーンという凄まじい音がした。そして部屋が揺れた。

地震か?

違った。

アパートの北側向かいの戸建てに住む奥さんの運転する車が、我がアパートのどてっ腹にぶつかってきたのだ。要はアクセルとブレーキの踏み間違いだが、壁が大きなダメージを受けた。

そしてその傷は我が部屋の外壁だった。

ついでに言うと、ここんちの奥さんてば、アパート専用のゴミ捨て場に自分ちのゴミを捨てにきてた。

《ポット》

電気コンロが壊れた。

弁償させられるのが嫌で、管理会社に連絡しなかった。

しかし、調理が出来ない。その時無事な調理器具は電気ポットだけだった。

私はポットの中に生うどんを突っ込み茹でてみた。なんとか出来上がったが、非常にぬるく、まずかった。

結論として言えば、電気ポットでの調理は不可能である。

結局観念して管理会社に電話した。 無償で交換してくれた。

ついでに壊れてたエアコンも交換してもらった。

教訓

管理会社は鬼畜ではない

ここまで述べてきたことは、私の数年に渡る東京生活の中で、特に印象的だった事象である。このことを友人どもに話すと、かなりどん引きされた。

上記ほどではないが、他にもいろいろ不快な思いや苦々しい経験はさせられた。

それでも一人暮らしは楽しい。腹をくくればな。